心遣い・コミュニケーション

気を遣う、気が付く

ある研修で、質問をいただきました。

「気を遣う」と「気が付く」とは、違うという話を先輩から聞いたのですが、意味がよくわからない、という内容でした。

言葉の言い回しに惑わされる必要はないし、人により解釈の違いはあると思いますが、と説明をさせていただきました。
これをテーマに事例を交えながら、書いてみましょう。

●事例1 ある知り合いの家に訪問した時

A「よくお越しくださいました。今日は、コーヒーを準備してお待ち致しておりました。
  このコーヒー、ブラジルにいる友人が吟味して送ってくれたものです。
  気に入っていただけるかどうかわかりませんが、ぜひお飲みください」
B「ありがとうございます。頂戴致します。(私は、コーヒー嫌いなんだよね。
  飲むと、気分が悪くなってしまって。でも飲まなくては。あ〜)」


●事例2 助手席への誘導

A「車でご案内させていただきます。どうぞお乗りください。
  後ろにお座りいただくと、話がしづらいですので、どうぞ助手席に。
  ゆったりとお座りください」
B「ありがとうございます。(エ〜、約1時間、話をしながら行かなくてはいけないの〜。
  ここまで来るだけでも疲れているのに、出来たら、話をしないでも
  良い状況にしてもらえると、楽なんだけどな〜。後ろに座りたい。)」


●事例3 お中元

A「いつも、〇〇さんからお中元をいただくんだけど、いらないんだよね〜。
  だってお返しをしなくてはならないんだから。それも送ってもらうものが、
  好きなものならいいんだけど、うちの家族みんな嫌いなんだよね。
  捨てるわけにもいかないし、いつも困ってるんだな〜」
A<お礼の電話にて>
 「いつもいつも、おいしい物を送っていただき、ありがとうございます。
  どうぞお気遣いのないように」
B「いえいえ、いつもお世話になりありがとうございます。
  お好きということを伺ったものですから。今後ともよろしくお願い致します」
A「……」


気を遣っていただいていることはわかっても、それがありがた迷惑ということがあります。
こちらとしては、相手の方に喜んでいただこうと思って行ったことが、逆効果になってしまうのです。
気を遣っているようでも、相手にとって迷惑であれば、それは気を遣ったことにはなりません。

これは、接客でも言えます。

A「お客様、これはサービスで付けさせていただきます。ぜひ、お使いください」
B「あ、すみません。ありがとうございます。(大きいな〜。こんなものもらっても、
  どうしようもないな〜)」

店としては、サービスで付けているものであっても、客としては、もらっても困るものがあります。

タクシーに乗ったり、美容院に行ってもそうです。

こちらとしては、世間話などしたくないのに、気を遣って話し掛ける人がいます。
もちろん話をしたい、と思っているお客様も多いと思いますが、そうではないお客様もいます。
ゆっくりと考え事をしたいと思っていても客であるこちらが、話の相手をしなくてはならない、という感じになってしまうのです。

「気を遣う」とは、一見親切なことのようで、一人よがりの面があります。

以前、書かせていただきましたが、接客のレベルアップ三段階の最初は、

 1.自分がされて嫌なことはお客様にしない。自分がされて嬉しいと思うことをして差し上げる

です。ですが、これは自分サイドからのことであって、相手の視点には立っていません。
極端に言えば、自分は、されてうれしいと思うことであっても、お客様の視点からすると、ありがた迷惑ということがあるのです。

余談ですが、自分の接客はレベルが高いと自分が思っている人が案外、こういうことに陥りやすいのです。
長年、接客業に携わっている人の中には、慣れからか、こういうことが発生しやすくなります。

挙句の果てには、
「私は、ここまでお客様のことを思って気配りをしているのに、全く気付いてくれない。
 鈍感な客」
とお客様批判をしてしまうのです。
これでは、本末転倒の話になってしまいます。

これに対し「気が付く」とは、お客様のそういう思いに気が付くということ、
また先手で、お客様が喜んでいただけることをすることができることです。


飲食店の事例で見てみましょう。

店員 『こちらのお客様は暑そう。よくクーラーが効く場所にご案内しよう』
お客様「あ、ありがとう。この部屋よくクーラーが効いているね。私、暑がりだから。
    良い部屋に案内してもらった」

ある小売店で。
急に雨が降ってきた時の事例で見ると、

店員 「お客様、もしよろしければ、傘をお貸し致しましょうか」
お客様「あ、ありがとう。助かるわ。今日は、雨が降るなんて思ってもいなかったので、
    傘を持ってきてなかったの」
店員 「では、お持ちください。お返しいただくのは、いつでもかまいません。
    次回お越しいただく時にでも、お持ちいただけたらと思います」
お客様「そう、助かるわ。では来月来る時まで、お借りしていていい?」
店員 「本当に、いつでもけっこうですので」


「気が付く」とは、接客のレベルアップ三段階の三段階目。

 お客様の視点で考え、実行する

ということになります。

気が付くための自分づくりをするには、接客レベルアップの三段階の二段階目、
「観察力」「察知力」が必要になります。

『あちらのお客様の行動を見ると、こういうことを欲しているように思える』
『こちらのお客様のおっしゃることを聞いていると、こういうことをして差し上げたら、
 喜んでいただけるのではなかろうか』

独りよがりの接客から「気が付く」接客への移行が大切です。


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